これは今まで鈍感だった私が悪いのか……。

「ねぇ瑞穂、柊君ってばいつの間に彼女いたのって感じだよねー。あーあ、希望絶たれちゃったなぁ」

「相手の人ってどんな人なんだろ? 羨ましいんですけど!」

同僚からまったく同情の目を向けられないのは、私たちが極秘で交際していたからだ。だから今の私の心境を知る人なんて誰もいない、それは不幸中の幸いだった。

恋に破れた可哀そうな人だなんて思われたくない。

『社内恋愛がバレたら色々面倒だろ? 瑞穂にとってもさ。だから俺たちのことは秘密にしておこう』なんて言われてふたりだけの内緒事にドキドキしていたけれど、その言葉の裏には二股男と社内で非難されたくなかったという意図が隠されていたなんて、今まで信じて疑わなかった私が馬鹿だった。

「そういえば瑞穂、今度の視察って柊君と一緒に行くんだったよね? いいなぁ、私も柊君と一緒に行きたかったよ~熱海!」

同僚のひとりにそう言われてハッとする。

そ、そうだった……。