一時間前――。

「あぁあっ! なんということだ! 私の息子の婚約者だぞ? だいたい先方の娘も娘だ! すでに妊娠しているだなんて! 私は聞いてないぞ、そんな話!」

珍しく岡崎専務から「会議室へ来てくれ」とただならぬ形相で呼びつけられたかと思ったら、その息子の見合い相手がすでに別の男とデキていて妊娠までしている。という事実が発覚し、俺は専務から筋違いの激高を浴びせられた。

しかもその男というのが……あろうことか俺の部下である柊健一だったのだ。

「だいたいあの柊という男、うちの社内にも交際している女性がいるって噂じゃないか、秘書から聞いたぞ、安西君、いったいどうなってるんだ! 君の部下だろう!?」

どうなってるもなにも、それって完全にとばっちりだろ……。

「すみません、専務……仕事上の教育はできても部下の女グセまでは――」

「わかっている! 君に八つ当たりをしているのもな。ただ、取引先をつなぐパイプがなくなったことに腹が立ってしょうがない!」