冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました

「あ、安西部長……誰か来たら……」

「っ……おいおい、ここはカップルシートだぞ? 不必要に入ってくるような野暮な店員はいないだろ」

肩を抱いている安西部長の反対の手が宙を掻く私の手を捉え、指を絡ませる。まだ足りないと、再び口づけられれば、安西部長の舌に絡み取られた私の舌は引きずられるようにして彼の口内へ誘われる。

「あ、ん……っ」

「もっと舌出せって」

きつく吸い上げられて噛みつかれたけれど、痛いと感じるには甘さの残る加減で抵抗もできない。増していく水音が部屋に響き、羞恥を煽る。安西部長の舌先が濡れた唇をなぞり舐められるたびに心臓が跳ね、甘く噛まれればぞくぞくと背筋が震えた。

キスでこんなに身も心も震えるような感覚は初めてだった。舌と唇だけが過敏になって背中や肩がすぅすぅと寒い。やられてばかりじゃいられないと、私も拙いなりに安西部長の唇を軽く噛むと、彼が喉の奥で笑った。

「な、なに笑ってるんですか?」

「いや、可愛いなって思っただけだ」

「もう、馬鹿にしてます?」

恨みがましい顔をしているつもりなのに、安西部長は驚くほど甘ったるい顔で目を細めている。