冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました

手にしているウィスキーグラスを揺らし、口に持っていくかと思いきや結局手を置く。明らかになにか思いつめているような様子だ。

私を見つめる視線を外し、テーブルに両肘をついて顔の前で手を組むと、安西部長はぼんやりと夜景を眺め始めた。横顔からでも真剣な眼差しをしていることがわかって、私は喉奥で停止している言葉を呑み込んだ。

「花火大会のとき、お前、俺に告白しただろ?」

「え……」

「正直……困ってる」

あのとき、打ち上げられた花火の爆音にてっきり私の告白はかき消されてしまったのだと思っていた。けれど、実際はちゃんと安西部長の耳へ届いていた……が。その驚きよりも、彼が最後に口にした「困ってる」という言葉を聞いて、ガラスの破片でも飲み込んでしまったかのように喉に激痛が走った。その痛みは胸に転がり落ち、深々と心臓に突き刺さる。

素敵な場所で安西部長と初デートだなんて浮かれていた気持ちが一気に急降下していく。

「い、いやだな、安西部長あのときちゃんと聞こえてたんですね。そうですよね、失恋してまだ間もないのに軽率ですよね」

顔に張り付けた笑顔はぎこちない。あはは、と乾いた笑いで誤魔化すことで精一杯だった。本当は今にも声が震えだしそうで、唇を噛んで湿っぽくなるのを堪える。

ああ、私、馬鹿だ……。