冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました

次の東京行の新幹線は十分後。ギリギリのところでなんとか熱海駅にたどり着いた。

「ありがとうございます。じゃあ、行ってきますね」

安西部長が改札口に一番近い場所で車を止めてくれたおかげで無駄に走らずに済みそうだ。

「大倉、頼んだぞ。俺もすぐに追いかける」

「わかりました。でも、安全運転で帰ってきてくださいね。大丈夫です。私にはこれがありますから」

私が満面の笑みでプレゼントしてもらったブレスレットを見せ、ドアを開けようとしたときだった。

「あ……」

安西部長は私の肩を引き寄せると、一瞬なにが起こったのかわからないような唇に掠めるだけのキスをした。

「頑張ってこい。うまくいくおまじないだ」

その瞬間、本当は不安で仕方がなかった心がどっしりと安定感を取り戻すのを感じた。

できることならこのままここにいたい。けれど、時間は刻々と迫っている。

「はい!」

安西部長から二回目のキスをされて、呆然とする間も余韻に浸る間もなく、私は車から降りた。

本当は車が見えなくなるまで見送りたかった。またすぐに会えるのはわかっているのに、まさかのハプニングで安西部長とここで別れることになるとは……無性に名残惜しさを隠せなかった。

急がなきゃ! 新幹線まで逃したら今度こそ会議に遅刻しちゃう!

そして、時間に押されるように私は改札へ向かって走り出した。