「これじゃ埒が明かないな、会社に会議の時間をずらしてもらうように連絡いれるか」

安西部長はこの先にあるコンビニの場所をナビ画面で確認する。そこに車を止めて会社に電話をするつもりなのだろう。

会議に遅刻するわけにはいかない。せっかく安西部長がくれたチャンスだもの、そうだ!

私はなんとか今の状況に打開策はないかと考えを巡らせ、スマホの地図アプリで現在の場所を確認する。

「高速に乗って下りたところでも混んでる可能性を考えると……このままじゃ絶対間に合いません」

「それはあり得るな」

「あの、私を熱海駅まで送ってくれますか?」

意表をついた私の申し出に安西部長が私に顔を向ける。そしてすぐに私の意図を理解すると、パチンと指を鳴らした。

「そうか、その手があったか」

車がだめなら電車で帰ればいい。

熱海から新幹線で向かえば一時間程で東京に着く。それから会社のある新宿まで電車を乗り継いでも会議の時間までには間に合うはずだ。

現在地をスマホの地図でもう一度確認すると、幸いここから熱海駅まではそう遠くない。