冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました

安西部長と……安西部長とキスしちゃった!!

ホテルへ帰る途中、安西部長と私の間に会話はなく、終始無言だった。茶化すこともできないくらいになにか考え込んでいたみたいで、キスの意味を問うどころか声をかけることもできなかった。彼は私に度胸があると言ったけれど、こういう色恋に関してはどうしても臆病になってしまう。だから部屋に帰るなり、ふたりきりになるのが怖くて大浴場へ逃げ込んだ。

雨に濡れた身体を綺麗に洗い流し、さっぱりして部屋に戻るとそこに安西部長の姿はなかった。

キスをしたことは後悔していない。彼がどう思っているのか気になる。けれど、それを尋ねる勇気もない。

窓際の丸テーブルに目をやると、私が今日作った報告書の確認をしていたようで珍しく画面が開きっぱなしになっていた。スリープモードになっていないということは、ついさっきまで安西部長はここにいたということだ。

安西部長も同じようにふたりきりになるのが気まずいなんて思ってたりして……?

時刻は二十三時。

はぁ……。

ため息をついてベッドに横になる。

報告書、大丈夫だったのかな? 安西部長が戻ってきたら今日支配人と視察した内容を聞いて、それから……。

報告書はまだ完成していない。やらなければならないことが残っている。それなのに、私の頭は徐々に緩慢になっていき、ついには重くなった瞼を閉じてしまった――。