冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました

「せっかくの花火、最後まで観られなくて残念だったな」

「そうですね……へっくしゅん!」

なんとか落ち着いたと思ったら急に体温が下がったようで、緊張感の欠片もないくしゃみをしてしまう。

「やっぱり寒いんだろ、ほら、もっとこっち来い」

安西部長の腕が私の腰をぐっと引きつけると、ぴったりと密着した部分だけにじんわりと温もりが広がった。彼の腕は私の腰を抱いたまま。だから私もいきなりのその行動に動けなくなった。

ふたりの間に会話もなく、雨の音だけが沈黙に響いている。

こういうとき、安西部長……何考えてるんだろう?

チラッと横目で様子を窺うと、彼は夜の海をじっとただ見つめていた。

「あの、安西部長」

「なんだ?」

「始末書のこと……ありがとうございました」

一瞬、なんのことか理解し兼ねたように安西部長は眉を跳ねさせた。すると、次にハァァと盛大にため息をついて「あれを見たのか」と片手で目元を覆った。

何も言わずに胸の中に留めておこうと思っていたけれど、私がこうして会社に勤めていられるのは安西部長のおかげだ。だから、やっぱり知らないふりなんてできなくて自然とお礼の言葉がこぼれた。

盗み見てしまったことは否めないけれど。