安西部長が少し強引に私の手を取り、ぎゅっと握る。じんわりと温かい彼の体温が手を伝って私の心臓を揺るがした。なんだか本当の恋人同士みたいでこそばゆい。

「お前の手は小さいな」

「もう、また子ども扱いですか?」

「あはは、小さくて……俺の手に合う」

俺の手に……合う?

それってどういう意味ですか?と問おうとして躊躇う。安西部長の返事を聞く自信がない。だかから、ただ彼の温もりに甘えるように手を握り返すことしかできなかった。

しばらく出店を見て回っていると、りんご飴が売られている店を見つけた。

「わぁ、りんご飴! 懐かしいな」

ルビーのように真っ赤でツヤツヤしているりんご飴を見て私は目を輝かせる。

「お前、さっきあれだけ夕食食ったのにまだ食べるのか? ほんと、底なしの食欲だな……ここまでくると感心する」

「それって褒めてます?」 

「そんなわけないだろ、呆れてるだけだ」

そんなふうに言うけれど、安西部長の顔はなんだか楽し気に笑っている。

「安西部長もおひとつどうですか?」

「い、いや俺は――」

「いらっしゃい! そう言わずにうちのりんご飴は格別だから食べてみなって! お兄さん、おばちゃんの好みだから特別に試食ってことで一本サービスするよ。カッコイイ彼氏だねぇ」