冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました

「俺のパソコンに挿さってるUSBのファイルを参考にして報告書を作成しておいてくれ」

「わかりました」

それって、今朝安西部長のパソコンを見ちゃったときにあったあの資料のことだよね?

ホテルの支配人と会うため、安西部長は私服ではなくパリッとスーツに着替えて鏡を見ながらネクタイを結んでいる。

「ああ、あとそれから報告書はほぼ完成に近い形にしておけよ? なるべく早く仕上げて後から何かあったときに修正する余裕が欲しいからな」

「了解です」

「それから――」

まるで子どもを初めてお留守番させるときの親のように、安西部長は後から後からあれこれ付け加えてくる。

「わかりました。大丈夫です、万が一何かあったら連絡しますから、あ、ネクタイ少し曲がってますよ」

安西部長に似合う落ち着いたブルーカラーのネクタイを整えていると、「お、おう」となんだか照れくさそうに彼は小さく咳払いをした。

「はい、これでいいですよ。いってらっしゃい」

「じゃあな、何かあったら必ず連絡よこせよ?」

「はい」

やだ、なんかこういうのって……夫を送り出す妻みたい?

「お前、夫を送り出す妻みたい……なんて思ってるだろ?」

「はっ!? べ、別にそんなこと思ってないです! 早く行ってくださいってば!」

私の心の中を覗かれた気がして言い訳もできない。