こんな綺麗な人に言われると心臓に悪い。しかも突然呼ぶものだから、二重にびっくりである。

他事を考えていた自分も悪いのだが。


少し迷って。


「……妖精の森のシチュー」


おばあちゃんはよくシチューをそう呼んでいた。少し深めな木の器にあつあつの翠が少し多めの、シチュー。食べると野菜の甘みが広がってーーなんて空想を広げていたら、懐かしいなと返ってきた。


「おれもね、よく食べたんだ。朱鷺子さんはごはんよりパン派で、よく一緒にパンも焼いてくれたっけ」


「私も。妖精はシチューとパンが主食なのよって。ジャムもたくさんあるわって……」


白いレースのテーブルクロスの中央にはいつも季節の花が飾られて、ガラスのポットには輪切りのレモンとミントが入った、ミントレモン水。


“ハチミツも入ってるから、飲みやすいでしょう?夏はこれが一番よ”