10月5日、12時10分。


(よりにもよってどうして死にたくなった日をもう一度繰り返せねばならないんだ)


そんな怒りに震えつつ、キリキリと痛む胃を無視しながら朝に買ったであろうコンビニ弁当をほうばる。



(まさか、さっきまで見ていたのは夢なのか？ これが現実の世界だったりして……)


悶々と悩んでいるうちにたいらげてしまった空箱を捨てようと、ゴミ箱が設置されている急茶室に向かう。



途中、喫煙所の前を通り過ぎると、ヤニ臭い空気に混じって後輩たちの談笑する会話が聞こえてきた。



「やべー、心は鋼ってやつ？」

「はははっ、そうかもな」



嫌な痛みが、チクリと心臓を刺す。



嗚呼……この光景、身に覚えがある。


俺はこの時、彼らが会話している内容の続きを安易に予想することができた。



それは。


「佐原先輩ってさー、マジよく辞めねぇよな。課長にあんだけキツく叱られてんのに」

「俺だったら無理だわ〜。後輩の前であんな風に言われるとか精神的に耐えらんねぇ。あの人の心臓、本当に鉄で出来てんじゃねぇの？ はははっ」



俺の、陰口だ。




(やっぱり聞いたことがあるぞ、この台詞。身に覚えがある、この痛み。まさか俺、本当に自殺した日を繰り返しているのか？)