時計の針が12時を指す。

「…12時か」

休憩の時間だ。

「真斗、飯」

軽く伸びをしながら、真斗に話しかける。

「ん、分かった」

そう言いながらもカタカタとパソコンと睨めっこしている。

「飯食ったらでいいじゃん、早く行こーぜー…」
「あと5分待ってて」

はいはいと言いながら、何となく山田さんの方を見る。

何食ってんだあれ。
茶色い物をもそもそと食べてる山田さん、きっとパンだな。

「終わったよ」

暫く山田さんを見てると真斗に肩を叩かれる。

「あ? …あぁ」
「何見てたの?」
「あー、山田さん」

山田さん?と言いながら真斗も山田さんの方へ視線を移す。

「あぁ、明人さんまたパン食べてるんだ」
「またって、いつもパンなの?」
「大体はね」

早く行くよと言いながら真斗が歩き出す。
軽く返事を返しながらあとに続く。

俺達はいつも一緒に行きつけのラーメン屋に飯を食べに行く。

会社の近くにいくつかご飯屋があるんだけど、その中でもあそこの夫婦ふたりで経営しているラーメン屋が一番美味い。

ちなみに俺のおすすめは豚骨。
豚骨の癖にどこかさっぱりしてて食べやすい、女性からも一番人気。


「いらっしゃい!!」

ガラガラと木でてきた店の扉をあけると、店長の元気いい挨拶で迎えられた。
夏だと言うのに相変わらず店は混んでいる。


ラーメンのいい匂い。

ますます腹が減ってきた。

店に入って直ぐの左側のカウンター席が、俺達のいつもの席になっている。

「もやし盛モリ味噌ラーメンひとつと、さっぱり爽やか豚骨ラーメンひとつ」

ふたりで交互に言うよりひとりが一気に言った方が効率がいいって事で、注文はいつも真斗がしてくれる。

「相変わらず味噌ラーメンかよ」
「味噌ラーメンが一番美味いからね」
「それ豚骨の間違いだろ」

なんて会話をしながら、出来上がるラーメンを今か今かと静かに待った。