誠は可笑しそうに笑うと、萌衣の手を取って走り出した。

「は?!兄貴、良いのかよ、あれ⁉」

萌衣は驚いて、後ろから怒りの形相で追いかけてきている坊主頭を指差す。

誠はチラリと後ろを振り返ると、いたずらを企てている子供のような笑顔を浮かべて言った。

「良いの良いの!僕、文化祭は見る側だからさ!」

人混みをかき分けて走り続け、漸く坊主頭を撒いたところで、二人は立ち止まる。

「はぁ…、はぁ…、しつけぇ!」

「本当だよ、お陰で疲れちゃったよ」

誠は息を切らしながらうんざりした顔で言うと、萌衣を見る。

「ごめんね、勝手に連れてきちゃって。大丈夫?」