人生で生まれてこの方、可愛い、なんてお世辞でも言われたことがない。

それどころか、男に間違われてばかりだった。

女子なのに172㎝という高身長に、男のような口調、短く切られた髪、服装はいつもズボンでスカートなんて制服以外で履いたことが無い。

男に間違われて嫌だと思ったことは無いし、寧ろ「カッコいい」と誉められるので直す気は無い。

そんな俺に「可愛い」という奴が居るなんて、思ってもいなかった。

「本気だよ?あれあれ、僕の妹は鈍感なのかな?」

誠が笑って俺から体を離す。

うっ、俺こいつ苦手かも……。

宏太の方は少し前から離れていて、ワクワクした目で俺を見ている。