「ねえ、この絵の題名は決めたの?」


「ああ。水夏にしたよ。水の夏と書いて、水夏」


「すいか?」


「ああ」


ふうん、水夏ねえ、と佳穂はまた絵を丁寧に眺め、僕はその様子をそっと窺った。

題名は、眠る佳穂とびわを眺めていて思い付いた。
降りしきる雨、ラムネ、そんなものに飾られた夏だったから。

果たして彼女はこの題名を気に入るだろうか、と大きな瞳の動く様を見ていると、


「……うん、すごくいい題名ね」


と彼女はほほ笑んだ。


「ああ。ありがとう」


ふと外を見ると、雨が上がろうとしていた。