僕の庭

僕はびわを膝に乗せたまま、筆を進めた。

そして、ふと思った。


「……君、あの植木鉢の前に座ってくれないか?」


「え?」


膝の上のびわを眺めていた佳穂が、不思議そうに問い返した。


「植木鉢の前に座って欲しいんだ。背中をこちらへ向けるような感じで、膝を抱えて座る」


「分かった」


佳穂は頷くと、植木鉢の前に座り、僕を窺うように振り返った。


「こんな感じ?」


「ああ、そのままちょっと座っていて欲しい」


僕はキャンバスの朝顔の前に、佳穂の姿を置いた。