僕の庭

朝顔の花がいくつも顔を見せた朝、僕は絵を描き始めることにした。

下書きを描き、絵の具を溶きはじめた翌日、佳穂は現れた。


「こんにちは」


「やあ。入っておいで」


垣根越しに声をかけてきた佳穂は、門をくぐって庭に姿を見せた。
植木鉢から空に向かってツタを絡ませる朝顔に気付いて足を止める。


「うわぁ。随分成長した朝顔ね」


「すごいだろう?」


別に僕が誇るものでもないのだけれど、僕は得意気に言った。


「今は、この朝顔を描いているの?」


「そう。こんなにじっくり朝顔を見るのは、子供の時以来だよ」


しばらく朝顔を見上げていた佳穂は、縁側にいる僕の横に座り、キャンバス越しにまた朝顔を見つめた。


「うんうん、出来上がりが楽しみね」


「君はあのツタをどう思う?」


「え、ツタ?」


佳穂はひさしに手がかかりそうな朝顔を仰ぎ見た。