「じゃあ、そろそろ帰らないと」
日が傾き、影が長くなり出した頃、佳穂が持て余すように持っていた湯飲みを、コトリと置いた。
「また、来てもいい?」
「いいよ。いつでも来てくれ」
佳穂は立ち上がり、縁側の隅に丸まっていたびわに、「ばいばい」と声をかけた。
それから、桃色の絨毯を避けるように庭の端を慎重に歩きながら門扉へと向かった。
どうしても汚れてしまった絨毯の裾をぼんやり眺めていると、ようやく出口にたどり着いた佳穂が振り返った。
「ねえ、その絵の題名決めた?」
「え? ああ……」
僕は腕組みをして、少し思い悩んだ。
「……春風。春風だ」
「春風? そう、とてもいい名前ね」
佳穂はほほ笑んだ。
「じゃあ、またね」
「ああ、また」
日が傾き、影が長くなり出した頃、佳穂が持て余すように持っていた湯飲みを、コトリと置いた。
「また、来てもいい?」
「いいよ。いつでも来てくれ」
佳穂は立ち上がり、縁側の隅に丸まっていたびわに、「ばいばい」と声をかけた。
それから、桃色の絨毯を避けるように庭の端を慎重に歩きながら門扉へと向かった。
どうしても汚れてしまった絨毯の裾をぼんやり眺めていると、ようやく出口にたどり着いた佳穂が振り返った。
「ねえ、その絵の題名決めた?」
「え? ああ……」
僕は腕組みをして、少し思い悩んだ。
「……春風。春風だ」
「春風? そう、とてもいい名前ね」
佳穂はほほ笑んだ。
「じゃあ、またね」
「ああ、また」