「また、そんな味気無い事を言う。おじさん、楽しまなくっちゃダメよ」


「はは、すまない」


僕はぷうっとふくれた佳穂の顔を見て、小さく頭を下げて謝った。


「でも、こうしてこの桜を綺麗だと思って眺めたのは、初めてかもしれないよ」


「まあ、勿体ない事したわね。こんなに綺麗なのに」


「ああ。本当に、勿体ないな」


僕は、まだ花びらを降らせている木を見上げて言った。
佳穂はそんな僕の言葉にまだ少し不満げに、けれど困ったように笑いながら


「本当に味気無いんだから」


と言った。