「……嬉しかった。
どんな奇跡が起きたのか分からないけれど、あたしは起こしてくれた誰かに感謝してもし足りない。
貴方と季節を過ごしたい、それが叶ったんですもの。
あたしは、貴方とはたった一つの季節も、一緒に過ごせなかったから」

笑いながら言った花保理の頬には幾筋も涙が伝っていた。
僕はそれを何度も拭った。


「耕介さん、楽しかったわね。
あたし、たくさん笑ったわ。貴方も笑った。
ねえ、あたしたち、季節を一巡り巡ったのよ。」


僕はそれを黙って頷いて聞いた。


「貴方からのプレゼント、夢みたいだった」


花保理は胸元のブローチに大切そうに触れた。


「僕は……、君に指輪も、ネックレスもあげられなかったね」


「あら。どんな宝石よりも、このブローチが素敵だわ」


花保理はえくぼを窪ませて、笑った。
その笑顔は綺麗で、輝いていて、僕はたまらずに彼女を抱きしめた。