僕は家を飛び出して、定食屋に向かった。
飛び込むようにして店内に入った僕が見たのは、花保理ではない、初めて見る女の子だった。


「……花保理、は?」


え? と尋ね返す女の子を押しどかすようにして現れたのは、女将さんだった。


「あんた、体は大丈夫なのかい!?」


「女将さん、花保理はこちらに来ていませんか?」


「花保理ちゃん?」


女将さんの顔が曇った。


「花保理ちゃんは、もう、いないだろ?」


僕は言葉を最後まで聞かずに店を出た。
ここにはいなかった。

花保理。
花保理。

どこにいるの、花保理。



あの日の川縁、街中、僕らが出会ったゴミ捨て場。

足がもつれ、転び、泥にまみれながら、僕は花保理を探した。

どこに隠れているの?

僕はここにいるよ。


松葉杖が邪魔で、途中で捨てた。
感覚のない右足を引きずって、僕は声をあげて花保理を探した。