僕の庭

「ちょ、ちょっと待って。あたし今両手塞がってて、手拭いがこの割烹着の中にあるんだけど、その……」


「……もう一回、呼んでくれないか?」


僕はかすれる声で言った。


「え?」


「もう一回、名前を……」


慌てていた花保理が、僕を見てそっと笑った。


「耕介さん。耕介さん。何回でも呼んであげる、耕介さん」


優しい声音。



ああ。
僕は喉の奥から漏れる声を殺して泣いた。



母を失って、こんな風に名前を呼ばれた事がなかった。

まだ、僕の名を呼んでくれる人がいた……。






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