課長が念仏を唱え始めると周りは、
さらに人が増えていく。 それを見ながら思った。
他の人もこれぐらい友好的だったらいいのにと
そうしたら課長も傷つく事もないのに……。

念仏が唱え終わるとロウソクの火が勢いよく
燃え上がるとスッと消えた。
課長は、写真を持つと相談した人に渡した。
「除霊は、出来ましたよ」と言いながら

すると渡された女性は、驚いていた。
どうやらその写真の霊は、成仏して消えたらしい。
凄い…私のもやって欲しいな。
自分の過去の写真は、ほとんど霊が写り込んでいる。
課長なら、これを全て除霊してくれるかもしれない。
嫌な思い出の写真も全部。今度頼んでみようかしら?

「まどか?どうした?
さっきから、そこでボーとして」

ハッとする。いけない。
思わず考え込んでいたわ。

「す、すみません」

「おはよう。今日は、仕事で席を外すから
悪いのだが1人で営業に行ってくれないか?」

「は、はい。分かりました」

私は、慌てて返事する。そうか今日は、1人なんだ?
忙しいのなら仕方がない。
早く一人前になれるように頑張らなくちゃあ…。

私は、1人で営業に向かうことにした。
だが、数時間後。見事に惨敗してしまった。
課長が一緒の時は、住職関係もあって
契約を取ってくれていたのだが
保険のセールスは、難しいと改めて実感した。

いろんな家に訪問しても
まともに話も聞いてくれないし門前払い。
ハァッ…とため息を吐いた。こうも違うと
私って向いてないのかしら?と思えてしまう。

結局、契約0件のままトボトボと会社に戻ることにした。
帰ると課長が出迎えてくれた。

「お帰り。おや?
どうやら惨敗だったようだね?」

「ただいま戻りました。
すみません…私の力不足です」