教室に戻ると、

杏ちゃんと琴ちゃんがニヤニヤと笑いながら私を迎えた。


「しずく、2学期に入ってからこれで何回目?」


「もうさ、全校放送で流しちゃえば?
桐原しずくに告白しても無駄ですよーって。

だって桐原しずくは
流山颯大が大好きなんですからーって!」



「ぎゃああああああああっ!!!!!!」



慌てて杏ちゃんの口を両手でふさぐ。


フガフガいっている杏ちゃんに必死でお願いする。



「そんなこと、
言わないでっーーーーーーー!!!」



解放されて息を整えた杏ちゃんが首をかしげる。



「しずく、なんで顔真っ赤になってるの…?」


「だって、その名前聞いたら!!!」


「ながれ……」


「やーめーてーーーーーって!!!」



笑いながら杏ちゃんと琴ちゃんが
耳を塞いでいる。


ふたりとふざけていたら、
胃の痛みが落ち着いて、

少しだけお腹が空いてきた。


こうして、いつも私はふたりの存在に支えられている。


杏ちゃんと琴ちゃんに、
心のなかで"ありがとう"と思いながら、

カバンの中からお弁当を取り出して、
卵焼きをつまむ。



「ま、私もいい男だと思うよ。しずく、男を見る目はあるよ」


「流山、チャラチャラしてないしね。
硬派って感じだよね」



サンドイッチをパクッと食べながら杏ちゃんが、
うんうん、とうなづく。