だって、ふたりとも気が付いたはずだから。


いつもとは明らかに違う流山くんの表情に。


稽古中の流山くんの集中力はすごかった。


こっそりと見たことはあったけれど、

近くで感じる流山くんの迫力と集中力は、
緊迫した空気となって彼を包んでいて、

私の知っている流山くんとはまるで別人のようだった。


その凛としたオーラも厳しい瞳も、
学校では見たことのない鋭いもので、

そんな流山くんの姿はいつも以上に輝いて見えた。



でもそんな流山くんが、

吉川さんが稽古の列を離れると、
自分の稽古を中断させてそのあとを追いかけていた。


流山くんは、吉川さんのすぐ隣に私がいたことすら気づいていなかったのに、

吉川さんが列を離れたことには、すぐに気が付いていた。


流山くんがいつ道場に戻って来るのか、
ドキドキしながら待っていたけれど、


あの日


流山くんは、


私達が体験レッスンを終えるまで道場に帰ってこなかった。