流山くんにおじいさんのことを聞いてみようと近づいて、


その足をぴたりと止めた。



廊下の隅で、流山くんの前に仁王立ちしているのは指導係のマエガラ先生だった。



「お前な、ちょっと表彰されてるからって調子にのるなよ?

課外活動は学校の部活動と違って、
評価されないからな。

入学早々に2時間も遅刻なんて、馬鹿にしてるのか?

今回のことで留年してもいいってことだな」


……そうだった。


うちの学校は遅刻にはとても厳しくて、

なかでも指導係のマエガラ先生が厳しくて有名だった。



でも、どれだけ厳しかったとしても

たった一回の遅刻で留年が決まるはずがないのに!



嫌みをならべる指導担当のマエガラに、

流山くんは一言も反論せず、まっすぐにマエガラを見つめて頷いている。



「担任からもしっかり指導してもらうように言っておくからな」


粘着質なマエガラのお説教に
流山くんは最後までひとことも言い訳せず、


まっすぐに前を見つめて


「申し訳ありませんでした」


とはっきりとした声を響かせて謝罪していた。


そんな流山くんに、
マエガラもそれ以上のことは言えなくなったのか


わざとらしく大きなため息を落として、
職員室へと入っていった。


先生がいなくなると、
教室に戻ろうとした流山くんにとっさに声をかけた。


「あ、あのっ!電車で倒れたおじいさん介抱して
遅刻したんですよね⁈

どうしてそれを先生に言わないんですか?

あんなふうに一方的に…」




そこまで言って、笑顔の流山くんに遮られた。