「…たった一人の幼馴染を、失いたくないんだ。」
手の拘束を外す時に頭上から聞こえたかすれた声。
…泣いているのか。
「上手に教えてやれなくてごめんな。…こんな俺でも、まだ幼馴染と呼んでくれてありがとう。」
弱々しく言うと、肩をバシンと叩かれた。
「こんな俺とか言うな!…幼馴染は幼馴染だし、これからもそれは変わらない。」
雅の黒羽 逞真に対する想いも、黒羽 逞真の雅に対する想いも本物だった。
……本当は、全部が嘘だったわけじゃないんだ。
「…居なくなったりしたら許さないからな。」
釘を打って早足で部屋を出ていく幼馴染の背中をただただ見つめていた。
……もし、雅が俺の“モノ”になってくれていたなら。
俺は心を入れ替えて雅を心の底から愛していくつもりだったんだよ。
「…幸せになれ。」
でもその心配もなさそうだから。
───今はただ、少しだけ眠ろう。
瞬side end


