「おかえりなさい、紗奈さん。そちらの方は……あら?もしかして逞ちゃん?!」
「そうだよお母さん、逞真。」
「お久しぶりです、おばさん。」
「あらまぁ…大きくなったわねぇ。紗奈さんは分からないわよね、彼……えっと…彼とはどんな仲だったかしら……でも覚えてるのよ、彼の事…」
「お母さん!…大丈夫だから、あっちで横になってて?」
…この違和感はすぐに感じた。
小さい頃はおばさんは“紗奈”と呼んでいたのに、今は紗奈さんと呼ぶ。
そして俺の事を少しずつ……忘れていってる…?
「…若年性認知症なの。」
ポツリと呟いた紗奈の言葉が重く降りかかった。
「ごめんね、逞真の事先週話してたから、覚えてる内に会わせたいなって思ってたの。…でも逞真はもう芸能人だし、会えないだろうなって思ってたんだけど………」
今日偶然会ってしまった。
それが偶然なのか必然なのかは分からない。けど…来て良かった。


