先生が、私に触れている。


私の目を見つめ、彼氏に選べと言うんだ。


先生の指が頬に触れた瞬間、電流に貫かれたように体が痺れた。


「__先生?」


「確かに先生と生徒が付き合うことは、世間的には許されちゃいない。でも」


そこで言葉を切ると、先生が私の顎をくいっとあげた。


「先生は、柏木の彼氏になりたい」


なにかが、弾ける音がした。


自分の中で、ばしんと弾けたなにかが、私を突き動かす。


「先生!」と、私は目の前の胸に飛び込む。


わずかによろけた先生だったけど、私の勢いと思いをしっかりと受け止めてくれた。


だれも来ない美術室で、静かに抱き合う。


夢じゃないのか?


あの、三井先生とこうして抱き合うなんて、夢なんじゃないのか?


それだけじゃない。


先生を、彼氏にできるんだ。


先生と付き合うことができる。


それを決めるのは、この私。絶対に断られることがない、一方的な選択権は私が握っている。


先生を彼氏にできるなんて__。


みんなに自慢はできないけど、その秘密の恋はきっと、格別な味がするはず。


「先生、好きです」


気づけば、そう口にしていた。


抑えきれない思いが、溢れ出てきたんだ。


「俺も好きだ」


先生も応えてくれた。


ぎゅっと私を抱きしめたまま__。