「や、優しいひとがタイプだって言ったじゃないか⁉︎」


その場から立ち去ろうとする私に、そう言ってしがみ付いてくる。


足を掴まれ、身の毛がよだつ。


くすぶっあていた怒りの導火線に、火がついた。


「お前っ、キモいんだよ!」


持っていた鞄を、増田の脳天に何度も何度も振り下ろす。


整髪料の匂いが舞い上がり、せっかくの料理がせり上がってくる。この鞄ももう使えない。やっと足が解放されると、再び肩を蹴り押してやった。


「鏡、見たことあんの?」


転がっていく丸々と太ったオタクを睨みつける。


怯えた目で私を見返すのも気に入らない。


「誰がお前みたいなブサ男と付き合うかよ。金あんなら整形しろよ!それから出直してこい!」


「そんなっ__」と、目に涙が溢れている。


「泣くな!醜い顔がもっと醜くなるだろ。まず痩せろ!それかもう諦めろ!どれだけ日替わり彼氏したって、お前を選ぶやつなんていねーよ!」


はっきり吐き捨てて、私は背中を向けた。


ったく、ムダな時間を過ごしたな。


ううん、これで水曜日のデートはクリアしたはずだから、カッコいい彼氏を選択することができる。


あんなブッサイクなやつとは、比べ物にならないくらいのイケメン彼氏が__もうすぐ私のものになるんだ。