やっぱり、噂は本当だったんだ。


私、柏木智花(かしわぎともか)は、びっくりして立ち尽くしていた。


ぼんやりと、目の前を横切る市川志保(いちかわしほ)を見つめる。


志保と、その隣の背が高いイケメンを__。


いや、待って。


あの地味でブスでパッとしない志保に彼氏ができたと、噂で聞いたときも信じなかった。中学が同じだった志保は、いつもいじめられていたのに。


高校に入るとキャラ変を狙って、分厚い眼鏡からコンタクトにしたり、髪の毛を洒落てみたりするけど__ブスはブスだ。


少しはマシにはなったけど、通り過ぎていく志保は正直、野暮ったい。


それなのに、なんであんなイケメンが?


100歩譲って彼氏ができたとしても、同じレベルのカースト底辺のオタクがお似合いだ。


女子ウケ抜群のイケメンが、志保を選ぶなんて。


なにかおかしい。


なにか__。


そもそも、志保にできて、どうして私にできない?


それなりにオシャレに気を遣ってるし、カーストでいうと上のほうにいる私に彼氏ができないなんて、不公平じゃない?


気づけば私は、志保に声をかけていた。


「あっ、これ彼氏なの」


むかつく__。