それから映画を観て、モールをブラッとして。


たった数時間だけなのに、私たちはもうれっきとした恋人同士だった。


ご飯を食べ、夜景が見える空中庭園に連れていってもらう。


これまでのデートでは、体験できなかったコースだ。


ちょっぴり大人の、エスコートデート。


更には無数の星が散らばっていて、なんだか体もふわふわして夢見心地だ。


芝生に並んで座り、星空を見上げる。


理数系の大学に通っている拓也が、星座の名前を詳しく教えてくれた。


ロマンチックで、いいムードの雰囲気だ。


「智花」


名前を呼ばれ、空から拓也に視線を移す。


真っ直ぐ、真剣な眼差しが私を捉(とら)える。


肩を抱き寄せられ、ゆっくり、ゆっくりと拓也が近づいて__ここでキスをするということはもう、拓也で決定ということだ。


正直、それでいいかも。


こんな理想に近い彼氏はいない。


私を優しく包み込んでくれて、守ってくれる彼氏。


答えを決めつつ、私は目を閉じる。


唇が触れた瞬間、答えが確定する__。


「やっぱりごめん」


「えっ」と、私は目を開けた。


「キスしちゃだめなんだよ、日替わり彼氏は。決定前に関係を持っちゃ失格になるから」


「そうなんだ」


「でも、俺が彼氏になったら、必ず智花を守るから」