【殺害現場に来い】


お金の用意ができたと連絡すると、日時とともにメッセージが返ってきた。


殺害現場とは、先生が転落していった崖のこと。


私はひとり、あのペンションに向かう。


森の中を歩く。


ついこの前までは、ここを先生と歩いていた。


将来のことに想いを馳せて、ずっと2人で一緒にいるんだと思っていたのに__。


先生は、私のことを殺そうとしていたんだ。


きっと、ボーナスが欲しかったから。


恐らくこの1000万円は、手にし損ねたボーナスなんだろう。


これさえ渡せばいい。


手切れ金だ。


まだ先生への思いは残っているけど、私を殺そうとした事実は変わらない。


これで終わりにしたい。


私は、寺本さんと付き合わなければいけない。


志保が言っていた。


もしフラれてしまうと、チャラになった借金が元に戻る。つまり、1000万円の借金を負う可能性があるんだ。


フラれないよう、寺本さんの言うことをきかないと。


奴隷彼女にならないといけない。


でも、寺本さんは私のことを大切に扱ってくれるはず。


私を命がけで助けてくれた大輔には申し訳ないけど、もう進む道は決まっている。


いろんなことを考えているうちに、崖に着いた。


下を見下ろすとあの時と同じ、荒れた海が手ぐすね引いて待ち構えている__。


「お金、持ってきた?」


そんな声に振り返る。


えっ?


どうして__?