あえて大輔は、先生の話をしなかった。


私を気遣ってか、冗談を言ったり下らない話をしたりして、私を笑わせようとしている。


だから私も、無理して笑顔を作った。


少しでもそうしないと、助けてくれた大輔に申し訳ないし、いつまでも前に進めない。


勝手に籍を入れたことで両親の信頼を失ったし、弥恵も口にこそしないけど、なにも相談しないことを寂しく思っている感じがした。


そのすべてをこれから取り戻していかないといけない。


そう考えて、無理にでも自分を__。


いきなり、大輔に手を引かれ、バランスを崩した私は、そのまま寝ている大輔の上に倒れこむ。


「無理、すんなよ」


「えっ?」


「無理して笑うなよ。無理して笑うと、ほんとに笑いたいときに、笑えなくなるだろ」


「__うん」


熱いものが、込み上げてくる。


「悲しかったら泣きゃいいんだよ。誰も見てねーんだから」


「うん」


涙が、こぼれた。


この涙は、なんの涙だろう?


裏切られたことへの悲しみ?失った信頼?取り戻せない、好きだったひとへの弔い?


明白な理由はなかったけど、私は大輔の上で泣いた。


泣いて泣いて泣いた。


そして泣いたあとは、自然と薄っすら笑えたんだ。