私はいつも、このマイペース男に振り回されている。


(すず)ーまだー?」


高遠(たかとお)くん、近いってば…!」


「そーかな、フツーだよ」


そう言ったまま抱きついてくる彼は、高遠(りょう)くん。


明らかに校則違反のキャラメル色の髪に、常に眠たそうなたれ目。


これまた校則違反のピアスをつけている彼は、その整った顔立ちのおかげで、学年一モテると言っても過言ではない。


「高遠くんの“フツー”は私にはフツーじゃないの…!」


「僕にはフツーだからいーの」


そう言って、抱きしめる腕の力をさらに強くしてくる彼。


なんてワガママな。


「…と、とにかく離して、高遠くん」


「やだ」


私がいくらお願いしても、高遠くんは離してくれる様子はなく。


それどころか、私の首筋に顔をうずめてきて。


……ダメだ、心臓の音が高遠くんに聞こえちゃいそう。