☆☆☆

好きな人の眼球に注射針が突き立てられる。


あたしはイクヤが暴れ出さないように、必死で後ろから抱きしめていた。


イクヤの悲鳴が部屋中にこだましているのに、あたしは助けることもできない。


早く!


早く終わらせて!


たった数十秒の出来事が、あたしの中では永遠のように長く感じられた。


これだけイクヤと密着しているのに、トキメキなんて1つも感じられない。


そこにあるのは生き残りたいという信念と、絶望感だけだった。


カズヤがイクヤの眼球に空気を入れれば入れるほど、イクヤの眼球は風船のように膨らんでいく。


それは人間の顔から徐々にかけ離れ、怪物のようになっていく。


そんなイクヤを見ていて、あたしは恐怖を感じてしまった。


イクヤのことが好きなのに。


イクヤは必死で生きようとしているのに。


あたしはグッと下唇を噛みしめて俯いた。


あたし、最低だ。


そう思った瞬間、パンッ! と、本当に風船が割れたような音がして、イクヤの体が跳ねた。