人間サイコロ

イクヤがあたしの言葉に動揺したのがわかった。


「ゴキブリって……」


「この部屋にゴキブリなんていない。人間を食べるような狂暴なゴキブリなんて見たこともないよ」


きっと、このミッションは失敗する。


あたしは、ミホとホナミのように……。


そこまで考えて、あたしは頭を切り替えた。


それなら、大好きなイクヤの隣で死にたかった。


最期に気持ちを伝えて死にたかった。


あたしはイクヤの髪にふれ、そっと頭をなでた。


ずっとこうしたいと願っていた。


近い距離で、イクヤに触れたいと……。


「諦めるのは早いみたいだぞ」


カズヤの声に我に返り、あたしは振り向いた。


その瞬間、視界の中に大量のゴキブリが床を這っているのが見えたのだ。