確かに彼とはケンカも多くなり、玲の帰りが遅くなることも多々あった。
けれど、まだやっていけると思っていた。作った料理は食べてくれるし、話しを掛ければ返事をしてくれる。
でも………玲とはデートをほとんどしなくなっていた。恋人らしい事は、ただ体を重ねるだけ。
そんな関係がおかしいと気づいていたはずなのに、花霞は気づかぬフリをしていた。
もう、彼との恋は終わっていたのだ。
今の玲は冷静ではないはずだ。ここで話し合うことは出来ないはずだ。
そう思った花霞は小さく息を吐き、涙を手で拭いて彼から大きなスーツケースを受け取った。
「………わかったわ。もう、おしまいにしましょう。また、今度話しをしましょう。」
「おまえとはもう話す事はない。………あ、その持っている鍵も貰うぞ。」
「あっ………。」
もう別れたら他人とでも言うかのように、玲は花霞が持っていた鍵を奪い取った。
「玲、じゃあ………せめて、忘れ物がないか確認しておきたいんだけど。」
「俺がそのスーツケースにおまえの荷物入れといてやったから、そのまま出ていけるだろ。」
「それでもっっ!貴重品とかは自分で見たい。通帳とか、貯金箱とか……それに玲と話が………。」
「あぁ………おまえのお金なら全部使った。」
「…………え………。」
「新しい彼女がさ、ベットは新しくしたいとか、車買いたいとか言っててさ。」
「………なんで、そんな事を……。」