すると、彼が「少し後ろを向いて。」と言ったので、花霞は体の向きを変える。
 すると、椋は指で花霞の傷口に触れた。
 檜山のボディガードが撃った銃弾が当たった場所だった。弾を取り出した傷跡はすっかりと塞がっていたけれど、完治はしていない。痛みはなく、むしろ何も感じなかった。


 「こんな跡になってる………痛そうだ。」
 「もう痛くないよ。大丈夫。」
 「…………ごめん。俺があそこで冷静さを失っていたから………。」
 「椋さん、それはもう気にしないでって、何回も言ってるのに。」
 「………そうだね。でも、俺はこの傷跡を見るたびに思い出すよ。花霞ちゃんをもう傷つけない。守るために………。」
 「…………あ………。」


 傷口に唇の感触を感じ、花霞は小さな声を上げる。体を正面に向けられ、椋の顔が見えるようになると、彼は少し切ない顔をしていた。



 「君が僕の元に戻って来たって感じさせて。」
 

 椋の熱っぽい低い声で、そう囁かれると花霞は頷いて、椋にキスをした。

 その後は、椋は割れ物を扱うように、花霞は抱きしめてくれた。それでも、久しぶりに感じる彼の熱と吐息、そして汗に花霞の体は激しく彼を求めた。
 「もっと………。」という言葉と、花霞の行動に椋も少しずつ自分の欲を吐き出してくれる。少しぐらい荒々しくていい。
 その方がずっと椋を感じられる。
 そう思い、花霞は強く彼の背中に抱きついた。
 最後に聞こえたのは、低く唸るような自分を呼ぶ声。
 花霞は、幸せな熱を肌で感じながらゆっくりと目を閉じた。