「鑑について聞いてきた方はあなたですか?」
 「はい。椋の妻の鑑花霞です。」
 「………奥さん、でしたか。私は、管理官をしております、警視の滝川です。少しお話をさせていただいてもよろしいですか?」
 「はい。ぜひ、よろしくお願い致します。」


 警察官の階級はよくわからないが、警視と聞くと「すごい人」という事だけは知っていた。花霞はそんな人がわざわざ椋の名前を聞いてやってくるとはどういう事なのか。花霞は困惑しながらも、滝川の後について行った。

 通されたのは小さな部屋で、客室なのかソファが向かい合って配置されていた。
 花霞を安心させるためか、女性の警察官が一人おり、お茶を準備した後も背後に待機していた。


 「花霞さん、でしたね。椋について、何をお聞きしたいのですか?」
 「あの……彼が今どんな仕事をしているのかを。何を追っているのかを知りたいのです。捜査の事など一般人である私が知る権利はないと思うのですが、心配で……。怪我をしてくる事もあって。それに最近は帰ってこないので………。」



 花霞は自分が知っている事や、彼が死のうとしている事を隠しながら、滝川に話をした。彼がどうして捜査でそんな考えになったのか。独断で行動しているのならば、止めさせて貰いたいと思ったのだ。

 花霞は、滝川に必死の思いで伝えたつもりだった。けれど、滝川は何か考え込んでいる様子だった。


 「なるほど………。花霞さん、あなたに伝えておきたい事があります。落ち着いて聞いてくださいね。」
 「はい………。」