(☆奏多side)


商店街を抜け
駅前広場に着いた



「点灯しているの初めて見た

 クリスマスツリー、綺麗!!」



子供みたいに目を輝かせて
ツリーを見ている美紅



「今年は
 ツリーにフルーツの飾りを
 つけたって聞いた時には

 そんなツリーで大丈夫?
 って思っちゃったけど

 点灯してると綺麗だね」



はしゃぐ美紅



俺はこのツリーが点灯しているのを
もう3回くらい見た



他の女の子達と見ていた時は

「イルミネーションとか
 ツリーを見たい
 女の気持ちがよくわからん」

と思いながら見ていた



でも今は何で
このクリスマスツリーが綺麗だって
素直に思えるんだろう・・・



美紅とずっと見ていたいなって
思うんだろう・・・





その時 ドタッ!


近くで誰かが倒れた



「え??きぬさん!!

 大丈夫???」



美紅が
倒れたおばあちゃんに
駆け寄った



「美紅ちゃん

 ちょっと転んだだけだから大丈夫よ

 でも、歩けそうにないわ

 息子に電話して
 迎えに来てもらうから
 気にしないでちょうだい」



「ちょっと待ってて・・・
 竹原さんの店で
 車いす借りてくるから」



美紅・・・
すっかり俺の存在
忘れてる・・・



でも
他人にここまで優しくできる女の子に
初めて会った気がする



「美紅、車いすはいいよ
 俺がおんぶして
 家まで送るから」



「え?」



「そんな・・・
 そこまでしていただかなくても・・・」



「おばあちゃん!
 こういう時は
男を立ててくださいよ!」



俺がそういうと



「主人の
 若い時を思いだしたわ

 あなたのように男らしかったのよ

 ではお言葉に甘えて」



とおばあちゃんは微笑んだ




おばあちゃんの家は
商店街で和菓子屋をしていて

家まで送ると

お礼に真っ白い雪のような
イチゴ大福をもらった



「奏多君
 口の周りに白い粉ついてるよ」



ベンチに座り
二人でイチゴ大福を食べている



「美紅だって
 口の周り白いじゃん」



「え??

 私も???」



美紅と目が合って
一緒に声を出して笑った



美紅といると
素の自分を出しても
受け入れてもらえる
安心感がある



もっと一緒にいたいなと
思ってしまう



「奏多君て、優しいんだね。」



「俺は女性には
 優しくすることにしてるから

 それがおばあちゃんでもね


 美紅は
 あのおばあちゃんと
 知り合いだったんだな」



「商店街の人達は
 みんな知り合いだよ

 親が仕事で忙しかったから
 子供のころから商店街の人たちに
 面倒見てもらってたし」



「そっかぁ」



人情味がある美紅の性格は
この商店街で
育ったからなんだろうな



「奏多君!
 今日はオードブル売ってくれたり
 おばあちゃんを助けてくれたり
 ありがとう」



今言わなきゃ!



また美紅に会いたいって!



もっと話したいって!



今言わなきゃ!



頭ではわかっているのに
言葉が出てこない



「美紅、じゃあな」



もっと一緒にいたいと思いながらも
キラキラ輝くイルミネーションの中を
俺は家へ向かって歩いていた