だが魔力のある人間にとっては、いとも容易く行使できる

私の見立てでは、花音さんはこの魔術を使うことが可能だ

「・・・・・・離れていてください。精神核への攻撃は、使う魔力が大きいので」

「わかりました」

私は答え、中庭から離れた

廊下の、ギリギリ花音さんの様子が見えるところまで後ずさり、一応のために結界を張る

それと校舎の外壁にも薄く張っておいた

精神核への攻撃は魔力を大量に消費する・・・・・・と同時に、魔力の解放を伴う

味方にも害がある場合があるため、この魔術は最終手段

まあ戦場では、最終手段と呼べるほど、魔力が残っているかどうかもわからないけれど

「・・・・・・いきます」

張り終えたところで、花音さんの魔力の昂りを感じた

いよいよ

「理を護りし器よ。妾は脆弱なる身に余る存在意義に異を唱え、汝を穿つ刃となる!」

刹那、空気に見えない何かが走った

ぴきぴきと空気が凍りつくように

化物に変化はない・・・・・・そう、傷跡は一切ついていない

だがそう思ったのも一瞬

「きゅぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」

ぐるん、ぐるんとその身を地面に打ちつけ、のたうち回る

愛くるしい顔は苦痛にゆがめられ、その口からは苦悶の声が漏れる

・・・・・・一切魔力による被害はなし、と

自分自身の周りに張った結界を解除し、花音さんに近づく

やがて、化物は力尽きたようにぐったりと地面に倒れたまま、動かなくなった

そして泡沫となって、溶けるように空気に消え去った

「ふぅ・・・・・・はぁ・・・・・・」

「大丈夫ですか?」

「は、はい・・・・・・大丈夫ですよ」

精神系の攻撃をしたからか、よほど疲弊したらしい

肩で息をする花音さんに、私はこっそりと、魔力回復系の治癒魔術を施す

魔力の消耗は生力の低下に直結する。バレないレベルでやれば問題ない