「あ、小鳥遊さん」

私に気づき、机に置かれたパソコンから目を離す

大郷くんは大郷くんで、パソコンに向かってキーボードを叩いていた

どうやら生徒会の新聞の作成中らしい

入学からしばらく経ってからか、以前見かけた新聞とは内容が全く違う

以前は確か、先生の紹介と先輩たちからのメッセージだったはず

だが今回は、今学期に行われるイベントの一覧と、小さなコラムを掲載するらしい

「なにか手伝うことがあれば言ってください。暇なので」

「そう?んー・・・・・・それなら、この文章の推敲頼んでいい?俺ちょっと今から見回りの時間なんだ」

見回りの時間

なるほど・・・・・・化物対策の

それを一瞬で察した私は、了解の意味を込めて頷く

推敲を頼むということは、ほとんど終わっているのだろう

椅子から立ち上がった彼に代って私が座り、パソコンのマウスを動かして文章や写真の位置を確認する

大郷くんが部屋から出ていくのを横目に見ながら、画面を真っ直ぐ見つめる

「間違ってる・・・・・・」

打ち間違いを発見し、すぐに訂正する

多分こう打ちたかったんだろうなと推測できる程度の間違い

他にも誤字脱字から変な日本語まであらゆる訂正を施すこと30分

やたらぐったりと疲れた大郷くんが帰ってきた

「ん?碧、なんでそんなに疲れてるのよ?」

「や、結構強かったんで」

琴葉先輩の、どこかと心配そう問いかけに苦笑いしながら答えた

強かった・・・・・・?

けれど、そこまで強い魔力は作業中に感じてはいない

強い化物がいるなら、それ相応の魔力の気配がしてもおかしくない

いや、というかそれが妥当だ

なのに、なぜ・・・・・・?

一つの可能性を考え出した時

「んー?ちょっとごめんね碧くん」

大河先輩がひょいっと椅子から降りたかと思うと、すすっと扉の方に近づき、大郷くんの元へ

そして、すっと額に手を伸ばし、そのままデコピンを食らわせた