きらりと光る指輪を見つめ、ふと顔を上げると気まずそうにこちらを見る大郷くんの顔が映る

私、何かした?

思い返してみても何も思い当たる節はない。となれば、彼の私情か

「あのさ」

「?なんでしょう」

「いやー・・・・・・さ、あの時はごめんね」

「あの時・・・・・・ああ」

あの時

おそらく、彼が化物に取り憑かれていた時のこと

まさか自分に取り憑いていたとは思っていなかっただろう

私も、今もし化物に取り憑かれていると知れば、全力でここから逃亡する

このままでは周りの人に迷惑をかけかねないから

いや、一言でいえば迷惑になってしまう

「別に気にしてはないので」

「いや、俺が迂闊だった。取り逃した化物が自分のとこにいるなんて、魔術師なら気づいてもおかしくないのに」

悔やむように顔を歪める

こちらからすれば、化物の対処は家業のようなものなのだが

まあ、彼のプライドというか矜恃というか・・・・・・あるのだろう

「ほんと、ごめん。下手をしたら小鳥遊さんを傷つけていたし、クラスのみんなも・・・・・・」

いつまでもマイナス思考の彼にため息をつく

「いつもの大郷くんらしくないです」

「・・・・・・へ?」

ワンテンポ遅れて反応する大郷くん

くすりと笑い、私は彼に背中を向けた

「結果、大郷くんは誰も傷つけずに済みました。それだけです。下手をしたらなんて、最悪の事態なんて、今の大郷くんが考えても次に繋がりません。自分の落ち度は理解して、そこを改善していくことに力を注げばいい」

「え、いやでも・・・・・・小鳥遊さんがいなかったら、俺は」

「大郷くんは何がしたいんですか?なんのために魔術師になり、生徒会に入ったんですか?答えは決まっているでしょう。ただそれに向かっていくだけです。やるべき事をやると決めたら一直線に進むまで」