その夜もなんだか寝つきが悪かった。
 夜やろうと決めていた課題は終わらせたしいつも通りの時間に布団に入ったものの、しばらくごろごろとしてしまった。
 寝返りを打って障子越しの月のあかりを眺める。
 初めてお会いした音葉さんは綺麗な女性だった。
 自分とはまるで違うタイプだ、と思う。
 洋装を取り入れた新しい服。
 まっすぐな長い黒髪。
 きりっとしていてそれこそ『時代の先を行く女性』を象徴しているような強さを感じさせる雰囲気があった。
 その点も金香の胸をざわつかせた。
 先生は『時代の先端』に敏感で『これからは女性の地位をあげていくこと』にも肯定的であったので、もしかして先生はそこを気に入られたのではないかしら。
 などと思ってしまい、金香は自分に驚いた。
 先生はあの方のことをどう思っておられるのかしら。
 ようやく眠気がやってきて、うとうとしながら無意識の範疇で金香はそう思っていた。