眠っては起き、を繰り返したのだが結局翌朝になっても熱は引かなかった。
 金香が思ったよりも事態は良くなかったらしい。
 飯盛さんと煎田さんが朝、様子を見にきてくれて少し話し合ったあと、医者を呼ぼうという話になった。金香はただそれに甘えるしかない。
 医者がきたのは昼前であった。
 胸に聴診器を当てられたり喉を診られたりと、簡単な診察であったが結果は「普通の風邪でしょう」とのことだった。
 風邪薬と喉の炎症が酷いということで喉の薬も出される。
 喉の薬は小さな飴玉のようなものであったが「噛まずに舐めて摂る」と教えられた。味がつけられているようで苦くはなかったが美味しいものではなかった。
 それでも早く治すためにはきちんと薬を飲むしかない。薬など誰でも好きなものではないだろうが仕方がない。昼にまた作ってもらった粥を食べて、薬を飲んで寝た。
 ただ眠ったのだが……奇妙な夢に迷い込んでしまったようだ。
 夢の中で金香は白い靄のような中に居た。妙に心細くてあたりを見回すのだが誰も居ない。