にっこりと微笑んだその人は、ずっと私のことを診てくれているお医者様だ。
もう齢50歳になろうかという年齢だったと思う。
わざわざ私を診るために夜に来てくださる。


「ご飯は食べられましたかな」
「はい」


頷くと、飯島先生は笑みを深め、傍らにいる後藤さんを見た。


「はい、いつもの量を完食しております」
「よろしい・・・診察を始めても?」
「あ、はい」


私は、紅茶のグラスを後藤さんに渡して立ち上がる。
梶が準備してくれた椅子の方に移動して、飯島先生と向かい合わせに座る。


「手を」
「はい」


両手を差し出すと、先生は色や状態を見たり触診を始める。
手を見終わると、顔や目、口の中などを診ていく。


「・・・うん、特に変わりはなさそうですな」
「調子も変わらずです」
「外には?」
「夜だけです」
「よろしい」


先生は、私の応えにしっかりと頷く。


「薬はまだありますかな?」
「もう2、3日くらいは」


私の代わりに後藤さんが応えてくれた。
私の身の回りの管理は彼女がしてくれているから、私が応えることができないのもあるけど。


「じゃあ、薬も追加しておきましょう」


先生は、持ってきた鞄から袋を出して後藤さんに渡した。
それから、立ち上がる。