最後の陽が昇る日まで




「お嬢様が気にされることはないですよ」
「でも・・・」
「嫌だったら、とっくに辞めてますわ」
「!」


バッと後藤さんを見ると、ニッコリと笑顔だった。
今、すごいこと言われた気がする・・・。でも、確かに嫌だったら辞めているよね。ずっといてくれているってことは、彼女の言うとおりあまり気にしなくても良いのかもしれない。


「ーーーありがとう」
「お礼を言われるほどではありませんわ」
「でも・・・ありがとう」


口にスクランブルエッグを運びながら、後藤さんの優しさを噛みしめる。
ここで働いてくれている人たちはみんな優しい人ばかりだ。


安曇家。
大企業の社長をしている父とその秘書の母。
業績も良く、父の会社で働く従業員は1000人はいるのだとか。
資産も多く、こうして私が住んでいる家は豪華な屋敷で、管理するために使用人も雇っているくらいだ。
執事、メイド、庭師・・・何もしなくてもいい環境になっている。


「ごちそうさまでした」


お腹いっぱいになった。
手を合わせて挨拶をする。
空いた皿を後藤さんは片付けて、かわりに水の入ったグラスと、薬を私の前に置いた。