部屋に戻ると、ソファには千景が座っている。
近寄って、向かい合わせに座ると、千景は眉間に皺を寄せていた。
「大丈夫?」
「・・・あぁ」
千景の足を見ると、ズボンは履かれていたが、破れたズボンからは白い包帯が見えた。
「包帯、巻いてるの?」
「あ?大げさなんだよ・・・全然痛くねぇのに」
「そなの?」
わたしは、立ち上がって千景の傍らまで行ってみる。
そっと、包帯を障ってみようと手を伸ばしてーーーー避けられた。
「え?」
「・・・」
「痛くないんでしょう?」
「・・・痛くな・・・痛ぇ」
また障ろうとしたわたしに観念したのか、渋々白状した千景に、わたしは小さく笑う。
見栄を張ったのか、プライドが許さなかったのか。
男の子ってみんなこんな感じなのかな。
ソファに戻って、わたしは千景を見た。
理由はどうであれ、自分の家に両親や使用人の人たち以外は初めてだ。
「ーーーここ、お前の家?」
「そうだよ」
「・・・そうか」
千景は、客室をぐるりと見て、小さくため息をつく。
同じように見て、あぁ、と頷く。
「わたしの家だけど、両親のだから。わたしはただ、住んでいるだけ」
「住んでいるだけって・・・」
「本当の事だよ?」
嘘は言っていない。
だってわたしが建てたわけでもないから。
そう言うと、千景は小さく笑う。


